はらだみずきさん著『海が見える家』を読みました
いつ買ったのかもよく覚えていない、いわば「積ん読」の一冊だったのですが、本棚でふと目に入り手に取りました。
主人公の境遇と自分にあまりにもオーバーラップするところがあり、とてつもなく感情移入して一気に読んでしまいました。
自分の人生がおもしろくないなら、なぜおもしろくしようとしないのか。他人にどんなに評価されようが、自分で納得していない人生なんてまったく意味がない
この一文が胸に突き刺さりました。
僕たちは「幸せ」に対して、知ってか知らずかステレオタイプを持っています。それは「普通」と呼ばれているものです。でも、本当は、どんな大きさや形のものを幸せと呼ぶかはその人次第なんですよね。
「今日の夕飯は大好きなカレーだ!」という些細なことでもウキウキするのに、月に何十万円もらっていようと「明日も仕事だ……」と落ち込んでしまう。
僕は、この本の主人公・文哉と同じく、「普通の幸せ」を手に入れるのにすごく苦労するタイプです。過去を振り返り、今を見つめ直すとそう感じます。
この小説でワイプアウトというサーフィン用語を知りました。波に乗り切れず、ボードから落ちてしまうことを言います。とても良い言葉だと思いました。
文哉は新卒で入ったブラック企業を一ヶ月で辞め、人生からワイプアウトしています。ドロップアウトではなく、ワイプアウトなんです。
諦めずに次の波を待ち、それを捉えようと必死にパドリングすれば、また波に乗れる。今はうまく捉えられなかっただけ。
次のチャンスを待っている状態であるだけなんです。決してもう波に乗れないわけではないんです。
僕は、一度、「普通」から外れてしまったらもう幸せは手に入れられないと思い込んでいました。
でも、この小説を読んで気付かされました。幸せの尺度は人それぞれ、ワイプアウトしても次の波をつかめばいい、それがダメなら更に次の波がある、と。
いつまでも鬱々としていてはもったいないですよね。いつになるかわかりませんが、次の波に向けてパドリングをし始めたいと思います。